甲武信ユネスコエコパークの玄関口・三富
本多農園は、長野県・埼玉県と境を接する、山梨県山梨市の三富地域(旧三富村)にあります。
山梨・長野・埼玉の県境にある山塊は、古来より奥秩父と呼ばれてきました。
この奥秩父山塊と周辺の山村エリアは、豊かな自然と自然と共に生きる人々の営みが色濃く残っていることを評価され、「甲武信ユネスコエコパーク」に認定(2019/6)されました。
エコパークの表玄関とも言える三富には、奥秩父を代表する甲武信ヶ岳 (百名山)・西沢渓谷 (日本の滝百選『七ツ釜五段の滝』)・乾徳山 (二百名山)・雁坂峠 (日本三大峠)など、大小の山々・渓谷がひしめき合っています。
大河川の分水嶺、源流エリア・三富
甲武信ヶ岳は、日本を代表する大河川の分水嶺・源流です。
太平洋に注ぐ富士川(上流部は笛吹川と呼称)・日本海に注ぐ信濃川(上流部は千曲川と呼称)・東京湾に注ぐ荒川の、最初の一滴を注ぎだしているのです。
三富の集落は、上記の笛吹川沿いに形成されてきた典型的な渓谷地形につくられてきました。標高1000mから600mの南北に長い河川の沿岸や山間のわずかな平地を切り拓き、人々は住んできました。
本多農園は、この三富のちょうど真ん中、雷(いかづち)地区にあります。笛吹川に注ぐ支流・雷沢沿いに形成された澄んだ水の高台集落です。
なお、獣害リスク・気候変動リスク軽減のために、畑は三富(メイン・700~800メートル)、他に牧丘(550メートル)と塩山(400メートル)に分散しています。
有機農業=オーガニックの語源は、「オリジン」・「オーガナイズ」に由来すると言われています。
オリジン=根源・原点、オーガナイズ=調和・協調を語源とする農業は、農業本来の原点に回帰し、自然・環境・命と調和する農業です。
私たちの初めからの思い、「自然豊かな環境だからこそあまり難しいことは考えず、古来からの伝統的な農業の延長線上にあるやり方で、農業に取り組んで行きたい」はこの考えとぴったりでした。
古来の農業は、里山から様々な天然資材を手に入れ畑に投入し、獣害や虫を撥ね退ける知恵を出しながら行われてきました。
その結果、自然環境は調和を保ち、様々な生物が豊かに生きてきたのです。
私たちは、このような農業の実践を目指しています。
また私たちは、農業が一つの専門的な仕事だとも考えています。農業とは、人が食べるものを作り、人に提供し、人の生命を養う仕事です。
そのため、生産物をしっかりと作ることや収量を多することを目指す事が責務であると考えています。現在、多くの人が無農薬で作っている作物の種や苗は、病害虫に強かったり収量を多くするために代々品種改良し受け継がれてきたものです。その品種の栽培に、例えば肥料を投入することが全く不自然であるとは思っていません。無肥料栽培や自然栽培を争うことにあまり意味を感じてはいないのです。
上記の考えから、作物は無農薬・化学肥料無使用で栽培しています。果樹は草生不耕起栽培で、高級菜豆は緑肥+不耕起栽培で行っています。
「無農薬」の考え方についても絶対であるとは思っていません。古来からの知恵の中で、環境や人体への負荷が無い(極めて低い)農薬=灰・酢・木酢液が長い間使われてきました。灰・酢は私たちも肥料として使っていますが、使い方によっては肥料になるのです。これらを全否定する意味があるのだろうか?とも考えているところです。
土づくりは、剪定枝チップ、山から集めてきた落ち葉、豆類の脱穀後に出る豆がら、茅マルチ(詳しくはこちら)、緑肥、花豆棚などの残骸として出る竹、焚火跡の木炭を土に戻すことで行っています。戻し方は、土の表面にそのまま堆積させるやり方です。
畑にたくさんいる菌類・微生物・小動物が、これらの有機物を分解し土を作ってくれています。
また、エコモスさんの堆肥を投入している畑もあります。
肥料は、獣害が深刻なので、獣を呼ぶ可能性がある穀物系肥料は極力使いません。
黒富士農場さんのBM活性堆肥をメインに、自家製肥料として草木灰・米酢、この他に骨粉を使います。
獣害が心配ない一部の畑では米ぬかを使います。
草木灰と炭は、畑に隣接しているヒノキを中心とした林の木を伐採し、作成します。この木は、キノコづくりにも利用しています。